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【海外進学希望の学生さんへ】TTIC Ph.D.コース修了学生インタビュー

2024.09.25

本学姉妹校である豊田工業大学シカゴ校[Toyota Technological Institute at Chicago(TTIC)]のPh.D.コースへ2018年に正規入学した米田拓真さんが、2024年8月にTTICを修了しました。6年間のTTICでの研究活動や米国での生活、就職活動についてお話を伺いました。

*TTICや海外の大学院への進学を検討中の学生さんはぜひ参考にしてください。

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米田拓真さん(旭丘高等学校[愛知県]出身)
2018年3月豊田工業大学卒業(知能数理研究室
2018年9月から2024年8月までの6年間、TTIC Ph.D.コースに在籍
就職企業:Google LLC(米国)にて、人工知能研究部門(DeepMind)に所属

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Matthew R. Walter教授(左)との記念撮影より

TTICのPh.D.コースについて(日本との違いなど)

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 博士号を取得することを目標に日々研究を進めるコースで、日本で言う修士課程(2年)と博士後期課程(3年?)を合体させたものに相当していて、学部を卒業してそのまま入学できます。卒業まで5?7年間かかりますが、その間の授業料は大学が全額負担してくれますし、加えて日本円にして年間650万円前後 (毎年見直されており、2024年9月からは年間$46,000) の給付金が支給されます。また、健康保険等に関しても大学が手厚くサポートしてくれるため、生活面での心配をほとん殆どすることなく研究に専念できる環境が整えられています。TTICは他の米国トップ大学と比べても給付金や福利厚生が非常に充実していると思います。

 修士課程に対応する最初の2年間は授業を受けることが中心で、課題に追われる日々を過ごしながら、少しずつ研究を進めます。2年目の最後に?Qualifying Exam?という試験があり、これに合格すると、博士後期課程に対応する、研究が中心の生活へ移行することになります。

 研究生活では論文を読み、指導教員や他の学生と議論を交わしつつアイデア出しをして、実験から面白い結果が得られれば、論文を書いて学会に投稿するという流れになります。研究の大まかな流れは日本の大学と大差ないかと思いますが、TTICにいて強く感じた違いは、人と人とのつながりです。研究室の枠を超えて、他の学生や教員と気軽にディスカッションしたり、共同研究ができる環境が整っています。また、様々な大学や企業の著名研究者にTTICへ来てもらい講演?懇談を頂く機会が頻繁にあったり、ワークショップと呼ばれる小さな学会が定期的にTTICで開催され、他大学の教授や学生が多く参加したりと、大学外との接点を持てる機会がたくさん用意されています。

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TTICでの研究活動について(どんな研究?)

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 6年間で幅広く様々な研究に取り組みました。そのうちの一つでは、人間が機械やロボットを操作しているとき、人工知能がどのようにして、それをアシストするかについてを課題としました。この研究は、画像生成などでよく使われ、近年注目を集めている「拡散モデル」と呼ばれる手法のロボティクスへの応用として思いついたものです。画像生成に使われることが多いものの、「拡散モデル」自体にはより一般的なデータの分布を学習し、再現する能力があります。僕らはこれを利用して、多岐にわたる「安全な操作」のデータ分布を学習させ、それを再現する過程で、入力である人間の操作を加味することで人間の操作入力を尊重しつつ安全な操作を行う手法を作りました。この研究を始めた頃は、まだ拡散モデルがロボティクスの界隈に浸透していない段階だったので、自分らも基礎から学びつつ、より詳しい知識を持つ他の学生に相談に乗ってもらったりしながら研究を進めました。様々なパラメータを変えたときのモデルの振る舞いがよく分からず、試行錯誤の繰り返しだったことを覚えています。また、この研究ではボランティアを募って、実際に自分らのモデルを試してもらう必要があり、人集めの大変さもありました。自分はこれが苦手で後回しにしていたのですが、当時シカゴ大学で修士課程にいた共著者のLuzheの顔が広く、彼に任せるとあっという間に人が集まり、適材適所の中国足球彩票性を再認識しました。
 この他にも様々な研究に挑戦しましたが、どれも途中で壁にぶつかって進む方向が見えないという段階があって、何度も心が折れそうになりました。苦しいですがそこで休むことなく手を動かし続け、周りに相談して粘り強く活路を見出すという力が大切なようで、この点鍛えられたと感じています。

○所属:ロボティクス研究室(Matthew R. Walter教授)
○博士論文タイトル:Generative Modeling Perspective for Control and Reasoning in Robotics

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自身の英語力の変化について、どのように向上していきましたか?

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 豊田工業大学に入学するまでは、海外留学などの経験もなく、英会話が得意ではありませんでした。ただ、新しい英語表現を覚えたり、英語のコンテンツが少しずつ理解できるようになったり、TOEICのスコアが上がることで楽しさを感じて、それがモチベーションとなって英語学習を続けていたように思います。在学中には、iPlazaでの学習やフィリピンへの短期留学の他、神谷格教授にご協力いただいた英語の読書会などを通じて英語力を大きく伸ばすことができました。特に書く?話すといったアウトプットの部分は、いくら必死に取り組んでも独学では身につかなかったと思っていて、英語を学びあえるコミュニティに居られたことに感謝しています。

 大学での4年間で確実に英語力が向上したことを感じていて、卒業時にはある程度英語に自信が持てるようになっていましたが、渡米してみると教科書にないような日常会話の表現、アクセントなどでコミュニケーションの大きな壁を感じることが多々ありました。現地での生活を通して、研究などでのディスカッションや授業で使われるアカデミックな英語には苦労しなくなりましたが、日常会話となると文化的な背景や常識までも関わってくるので、今でも現地で生まれ育った人との壁はなかなか無くならないなと感じています。
 英語学習に正攻法や近道などないと思いますので、英語に苦戦している方は、自分のモチベーションを保つことを優先に色々な方法にトライしてみれば良いと思います。例えば、私は好きな映画 (Back to the Future シリーズ) を字幕付きで見て、知らない単語を全て書き出してみるみたいな変なこともしていました。役に立ったかは分かりませんが、楽しみながら英語に触れる方法の一つかもしれません。 

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TTICでの生活や就職活動を振り返り、今思うことは何ですか?

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 研究に行き詰まったり、シカゴでの生活に苦労したりと辛い場面が沢山ありましたが、今冷静に振り返ってみれば、それらも含めて良い人生経験になったのかなと思います。成果がなかなか出ず、苦しい時期もありましたし、美味しいご飯と温泉があって更に治安も良い日本で人生を楽しんでいる同世代を見て、なんで自分はシカゴにいるのかなぁ、などと考えたことも少しはありました。そういう辛い瞬間はありつつも、やはり研究や先端技術を追いかけて周りと切磋琢磨する環境が好きで楽しんでいる自分が常にどこかにいて、そのお陰でどうにか博士号取得までやり切ることができたのだと思います。博士課程に限らず、何かそれなりに大変なものごとをやり切るには、何かが「好き」とか、「楽しい」という自分の根底にある部分に耳を傾けることが大事なのかもしれません。

 私は豊田工業大学での学部時代、学修などをひとりで集中して行うことが多かったのですが、TTICに来て研究中心の生活になってから、ひとりで閉じこもらずに周りに意見を求めることの大切さを強く感じるようになりました。行き詰まって、これ以上の進展は見込めないと思うようなときでも、研究室の学生や先生と話してみると思いがけない突破口を見つけられることが何度もありました。「全てを自分で解決しようとする必要はないんだ」というのは大きな学びのひとつだったと思います。
 これは就職活動でも同じで、人を頼ったり、人とのつながりというものが米国の就職活動でどれだけ大切かというのを何度も思い知らされました。人気の会社への就職では、社内の知り合いから推薦を受けないと、そもそも書類審査に通らない、つながりが前提となるような部分も多くあり、初めはかなり戸惑いました。私自身は大してつながりが沢山ある方ではなく、途方にくれていましたが、周りとコミュニケーションをとっていく中で意外なつながりが見つかったり、先生や友人が知り合いを紹介してくれたり、学会で偶然企業の研究者と知り合ったりと、就職活動を意識して行動してみると思いのほかネットワークが広げられる側面がありました。
結果採用に繋がったのはほんの限られた一部でしたが、この過程自体が結構楽しかったですし、今回の就職活動で周りに助けられた分、今後は自分が後輩たちのつながりを広げる手助けをしようという意識にも繋がりました。

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TTIC20周年記念祝賀会(米田さんは写真右端)

 

博士課程への進学や海外の大学院(TTICを含む)に関心のある後輩へのアドバイス

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人生は一度きりですから、どこかのタイミングで思い切って興味があることに挑戦してみることは大切だと思っています。
 博士課程は万人向けではないですし、一筋縄ではいかない側面がありますが、その過程で得られる経験は他のキャリアパスでは得られないようなユニークで面白いものです。少し大袈裟ですが、ただ一方的に世の中に知られている物事を学ぶだけでなく、未知の領域へ踏み込み、学問を発展させるのに貢献できるのが博士課程であり、研究の醍醐味だと思います。
 少し具体的になりますが、これを読んでいて博士課程に興味がある方がまだ学部1, 2年生であれば、あまり分野を絞りすぎずに、大学の講義を中心に幅広く自分の興味のままに色々な基礎を勉強することをお勧めします。その傍らで、興味のある研究室(または似た分野の研究室)に少し顔を出したり、そこの先輩に話を聞いたりして自分の今後を想像してみると良いかもしれません。学部3年生以上になったら、研究室に在籍させてもらう等を通してしっかりとした研究経験を積むことが大切だと思います。これは研究生活が自分に向いているかを見極めるのにも役に立ちますし、大学院(特に海外)を受験する際にもどれだけしっかりした研究経験があるかというのは合否を大きく左右するはずです。
 TTICをはじめとした海外の大学受験に本気で興味があれば、自力で情報収集するのと並行して、早い段階から先輩方や教職員の方々に相談することを勧めます。十分な知識を持った方が学内にいなくても、卒業生やその他のつながりで受験経験がある方を紹介したり、資料等を共有してくださるかと思います。
 他にも、海外受験を志す同志を見つけたり、ひとりですべてを乗り切ろうとせず、周りからの適度なサポートを得ることで、挑戦への道が開けると思います。

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米田さん、ありがとうございます。今後のご活躍を楽しみにしています。